そもそもPERって何?(2)

そもそもPERって何?(2)

こんにちは! Nです。

1週空いてしまいましたが、今回は、PERのお話に戻ります。

前回のPERの記事はこちら。

そもそもPERって何? こんにちは! Nです。 今回は、株式投資を行う上でよく使われる評価指標、「PER」についてで...

PERの評価の限界?

PERでは「1株利当たり益に対して、どれだけの株価が付いているか」を評価しますが、成長株の評価にはもう少し工夫が必要です。

成長株は、成長性の期待から、PERが30倍でも50倍でもその期待の分買われます。前回ご紹介した安川電機もPERは36倍でした。

というのも、PERは下記の計算式の通り、直近の業績予想に対する評価となり、来期以降の利益の伸び幅が加味されていないのです。

予想PER=株価/今期の予想1株当たり利益

ではどうすれば、良いでしょうか。

成長株の評価方法

色々と調べたところ、楽天証券の過去記事にある山崎元さんの解説が参考になりそうです。

楽天証券「トウシル」ホンネの投資教室 →該当記事

PERは「1株当たり利益の何倍まで買われているか」という指標ですが、言い方を替えれば、「何年分の利益で株価分の投資金額を回収できるか」ということになります。

つまり、株価はこの先得られる利益の合計額の多寡によって、値段が付いていると考えられます。

割引現在価値モデル

企業は基本的には継続することを前提に事業を行っています。

仮に毎年の1株あたり利益(EPS)が一定で、現在価値に割り戻す割引率をrとすると、株価(P)は下記で表すことができます。

株価(P)=Σ[n=1→∞]{EPS/(1+r)n

すみません。急に小難しい計算式が出てきましたが、しばらくお付き合い下さい。

仮に割引率が5%の環境で、EPSが100円だったとすると、その銘柄の株価の評価は2,000円となります。

Σ[n=1→∞]{100/(1+0.05)n}=2,000

企業の成長率を加味

さらに成長株の利益は一定額のままではないですから、仮に一定の成長をしているとして、その成長率をgとすると、計算式は下記になります。

P=Σ[n=1→∞]{EPS(1+g)n/(1+r)n

この時、成長率が割引率を上回って(g>r)成長し続けるとなると、株価は無限大になってしまいます。

いかに成長株と言えども、市場に対して永遠に高い成長率を維持できる訳ではありません。

そこで当サイトでは、当面の間の利益として直近5期分を個別に想定して、それ以降は市場と同等の成長が得られるものとして想定株価を考えてみたいと思います。

P=EPS(1)/(1+r)
+EPS(2)/(1+r)2
+EPS(3)/(1+r)3
+EPS(4)/(1+r)4
+EPS(5)/(1+r)5
+Σ[n=1→∞]{EPS(5)(1+g)n/(1+r)5+n

実際の成長率gと割引率rはどうする?

ここで必要になってくるのが、成長率gと割引率rの数字です。

成長率g

成長率gは先程の山崎さんの解説記事を参考に、名目GDPの成長率を使います。

昨年末に発表された政府の経済見通しでは、2018年の実質GDPは1.8%。名目GDPは2.5%となっています。

参考:内閣府「平成30年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」 →PDF

うーん、感覚的にちょっと高いですね。

先日のIMFの経済見通しでは、日本の成長率はIMF1.2%と予測されていました。

ここはIMFの予測に近い民間予測の数値を使いたいと思います。2018年の実質GDPは1.2%。名目GDPは1.8%でした。

割引率r

割引率のrは、リスクフリーレート+リスクプレミアムで表されます。

「リスクフリーレート」は、名前の通り、リスクを取らずに得られる利回りです。10年国債金利が使われるのが一般的で、足元は概ね0.05~0.1%の間で推移しています。

「リスクプレミアム」は、こちらも名前からイメージできるかもしれませんが、投資家が株式に投資するリスクと引き換えに期待する利回りになります。


今回は個別株の評価について、市場全体と比較して行うので、市場の投資家が日経平均銘柄に求めているリスクプレミアムを考えてみます。

現在の日経平均のPERは15.5倍ですので、成長率を加味した「P=Σ[n=1→∞]{EPS(1+g)n/(1+r)n}」を変形させていくと、

P=Σ[n=1→∞]{EPS(1+g)n/(1+r)n
P=EPS/(r-g)
r=EPS/P+g
r=1/PER+g

r=0.0645+0.018=0.0825

現在の割引率は8.25%ですね。国債金利を0.1%としてもリスクプレミアムは8.15%で、投資家は日本株に高い利回りを期待していることになります。

こう見ると日本株はまだ割安なようにも感じますね。

成長株ニトリの評価

ここで以前取り上げたニトリの例を見てみたいと思います。

過去の成長銘柄(3) こんにちは! Nです。 前回に続いて、成長株の値上がり期待についてです。 最近、株価の上昇も...


直近のニトリの株価は17,700円(2018年1月26日現在)。

予想1株当たり利益612円で、PERは約29倍です。こちらもPERは20倍を超えていますが、株価は大きく下げることもなく、17,000円前後の推移が続いています。

業績予想

ここから直近5年間の業績をザックリ予想してみます。

同社はここ数年、都心部を含む店舗の積極展開により、大幅に利益を伸ばしており、直近3年間の経常利益の平均増加率は14%になっています。

事業のほとんどは店舗売上が占めており、いまのペースの店舗拡大が進めば、同等の利益増加率が保てるのではないでしょうか。

直近のIR資料を見ると、国内のニトリ+デコホームの期末店舗数は467店で期初の428店に比べ約9%増えています。

なお、同社は国内の店舗拡大に加え、海外への展開、オフィス領域への展開を進めていますが、その影響度はまだ大きくないと想定され、今回は既存の国内事業を中心に考えます。

国内の出店余地

今後の国内の店舗の出店余地は、どの程度あるのでしょうか。

飲食店の場合だと、1,000店を超える当たりから運営が難しくなるという話を聞いたことがあります。ただ、家具のお店が牛丼屋やファミレス並みにあっても無駄でしょうから、そもそも1,000店は難しそうですね。

どのあたりの企業が参考になるでしょうか。

家電量販店あたりでしょうか。しかも地方にも幅広く展開しているヤマダ電機、ケーズデンキなどが参考になりそうです。調べてみるとヤマダ電機の店舗数は649店、ケーズデンキは485店でした。

この当たりの業種だと500~600店が妥当な規模になりそうですね。

今期末のニトリの店舗数は467店で、年間で約9%増加してますので、このペースで行くと4年後には600店に達しそうです。

見込株価

仮に、4年目まで現在の14%の成長率で成長し、その後は市場並みの成長率になるとすると、

株価=612円/(1+r)
+698円/(1+r)2
+795円/(1+r)3
+907円/(1+r)4
+Σ[n=1→∞]{EPS(4)(1+g)n/(1+r)4+n
=12,870円

あれ? 現在の17,700円に比べて、だいぶ安い値段になってしまいました。

ただ、5年目以降もこれまで14%あった成長率が、急に市場平均の1.8%まで下がることもないと思うので、5~14年目までを半分の成長率7%で見積もったら17,900円程になりました。

市場では5年目以降の成長率や、今回見れなかった海外事業やオフィス事業なども評価されているのかもしれません。

いずれにしても、現在の株価は相応に先の成長の期待を含んだ株価になっているようです。

実際に使われている評価方法は?

本格的に投資をしている方や、機関投資家の方などはもっと精度の高い業績予測や先々の想定をしていると思いますが、投資初心者の元証券マンにはこれが限界です。。

ただ、先の期間を含めた評価については、もう少し良い方法がある気がしますので、ブラッシュアップできましたら、またお知らせしていきます。

当面の間は上記の方法で各会社の成長性と株価を見ていきます。

引き続き、お付き合い頂けますと幸いです。

まとめ

✔ PERだけでは成長株の評価は難しい

✔ 株価はこの先の利益の合計額と考える

✔ 成長し続ける会社の株価は無限大!!

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