人気投信解説-ハイイールド債券投信(2)
こんにちは! Nです。
前回に続いて分配型投信で2番目に人気のハイイールド債券投信、「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」についてです。
早速、組入資産の価格状況を確認して行きましょう。
組入資産の価格推移
ハイイールド債券投信の価格決定要因は主に下記2点です。
(1)米国ハイイールド債券の債券価格
(2)ドル円の為替
まずは「米国ハイイールド債券の債券価格」から。
ハイイールド債券の債券価格の推移
「フィデリティ・USハイ・イールド」は、「バンクオブアメリカ・メリルリンチ・USハイ・イールド・コンストレインド・インデックス」をベンチマークにしています。
上がってますね。2009年以降、右肩上がりに上がり続けています。
ただ、こちらのインデックスは配当込みの指数となっています。つまり債券の金利収入を含めて評価した指数ということです。
ですのでグラフは右肩上がりに見えますが、ここ2、3年はほぼ金利収入分の値上がりと言えそうです。
例えば3年前の2015年1月を起点とすると、2015年年初の1,048ポイントから直近2017年11月10日が1,251ポイント。上昇率は19%ですが、債券の利回りが前回記載の通り年7.1%ありますので、ほぼ金利収入分の値上がりと言えます。
そうすると、その間の債券価格自体はほぼ横ばい(上記の期間の場合は少し下がっている)と考えて良いでしょう。
ドル円の為替
ドル円の為替はこちら。
こちらも2015年を起点とすると、2015年年初の為替119円に対して足元113円台。やや円高方向で、組入資産の評価としてはマイナスです。
ということで、
今回も「組入資産の値上がり」はみられず、分配金の多くは「投資元本の取崩し」により支払われているようです。
この間の「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」の基準価格の推移はこんな感じ。
2005年中盤からの値下がりが顕著ですね。。
こちらも組入資産の価格推移の状況が特別悪いわけではありません。足元の運用に対して、分配金を多く出しすぎてしまっているのです。
ハイイールド債券投信の注意点
また、ハイイールド債券投信にはもうひとつ注意点があります。
前回書いた通り、ハイイールド債券は投資不適格の債券に投資していますので、デフォルトのリスクが一定数あります。これに伴い、債券価格が大きく変動する場合があるのです。
景気が悪い時には、あえてリスクをとることで、高い金利を得ることに加えて、景気回復の兆しが見えてくると債券のデフォルト懸念が後退し、債券価格の上昇による値上がり益も期待できます。
しかし、今のように景気が良い時には、既に金利が高い債券にお金が集まっていますので、相対的な金利メリットは低くなっています。
また債券投資なので、満期時には基本的に100で返ってくるものであり、景気が良いからといって株のように大きく値上がりが見込めるわけでもありません。
景気が悪くなったら?
一方で、もし景気が反転した場合には、急激な価格下落に見舞われる可能性が高くあります。
その際、機動的に対応できればいいのですが、個人で分配金の受取りを目的に保有している方が、そこまでの対応は可能でしょうか。
金融機関によっては、「投資不適格債ではあるものの、100社以上の債券に分散投資しているので、その中でいくつかのデフォルトがあっても金利でカバーできる」という説明をするところもあると思います。
しかし、景気が悪くなれば(もちろん景気の度合いにもよりますが)、それこそどの債券がデフォルトになるか分からないので、格付けに従って一斉に売られることになります。。
過去の債券価格の推移
こんな資料もありました。
フィデリティ投信株式会社 米国ハイ・イールド債券市場 マンスリー・ウォッチ →PDF
足元の米国ハイ・イールド債券市場のレポートなのですが、4ページ目の左のグラフを見て下さい。
上記の左のグラフです。
グラフの通り、値上がりは水色の塗りつぶし部分、金利収入がほとんどです。一方で、債券の価格変動はオレンジの線で示されていますが、こちらの違和感が分かりますでしょうか。
下のグラフの変動率は小さそうに見えて、08年では短期間で-50%近い水準まで下落しています。。「まあ、リーマン・ショックだから仕方ないでしょ」と考えられる方は良いのですが、「債券投信でそんなに下がるなんて聞いてない」となる方も多いのではないでしょうか。
また、グラフの通り収入要因はほぼ金利収入で占められていますが、現在はその金利収入以上に分配金を出している状況です。
今の状況を続けたとして、最終的に何が残るのか分からないですね。。
まとめ
✔ やはり分配金は元本を取崩して支払われている
✔ ハイイールド債券の価格変動は思った以上に大きいので注意が必要
✔ 「フィデリティ・USハイ・イールド・ファンド」はどこに向かっているのか